「ラン」森絵都
ランニング関連メディア(雑誌・本・etc)きっと何度も立ちどまりたくなる。あきらめたくなる。逃げたくなる。ありありと目に浮かぶ。でも、それでもきっと私は立ちどまらない。あきらめない。逃げずに最後まで走りぬけると、今は自分を信じられる。
ランより
ずいぶん前に買っておきながら、今の今まで積ん読状態でした。ようやく読了。……。もっと早く読んでおけば良かったです。それなりに重いテーマを背負っていながら、コミカルな語り口調で読みやすく、爽やかな読後感を与えてくれます。
「ラン」というタイトルですが、走ること自体はあくまでサブテーマのようです。何しろ、主人公が走り始める目的ができるのが、物語の半分くらいになってから。メインは、主人公の成長物語、、、なのかな?
家族の死、そして叔母の死によって、他人を拒絶しながら生きてきた主人公は、とある理由で40kmを自分の脚で走る必要に迫られる(その理由が物語の前半部分で語られるのですが、かなりスピリチュアルな設定なので、この設定を受け入れられるかどうかでこの物語の評価は分かれるかもしれません)。
始めはたったの5分も走れない。それが10分走れるようになり、30分走れるようになり、10km走れるようになり、そしてついにはチームメイトとともにフルマラソンを目指すことになる。
このチームメイトというのもくせ者揃い。ランナー雑誌の<あなたのチーム訪問>コーナーに掲載されるためにチームを設立しメンバーをスカウトしまくる変人ランナー、メタボなぼんぼん、虚弱体質な女の子、KYな口やかましいおばちゃん、などなど。主人公含めて、明らかに走ることには向いていないと思われるメンバーばかり。そんな彼らも走っていくうちに徐々に成長し、、、。
走る理由ってほんとに人それぞれですよね。健康のため、記録更新のため、ダイエットのため、単純に走るのが好きだから、そして、、、誰かをぎゃふんと言わせるため。でも、例え走る理由はみんな違っていても、ランナー同士共感できる何かがきっとあるんだと思います。
なんでも、作者の森絵都さんは、この本のために、実際自分も走ってみたらしいです。そのせいもあってか、ランニングのシーンはなかなかにリアルです。辛さ、苦しさ、そしてそれらを乗り越えたときの達成感。ランナーの皆様には共感できるシーンもいっぱいあるのではないかと。駒沢公園や皇居といったおなじみの場所も舞台に出てくるので、特に都内のランナーにとってはにやりとするシーンが散りばめられています。
そしてラストは、思わず涙腺がゆるんでしまいそうな展開。個人的にはかなりお薦めの一冊です。ちょっと厚い本ですけど文章は読みやすいですし、人の死をテーマにしていながらもコミカルな展開で重さを感じないので、一気に読めてしまいます。
走るっていいな、と改めて感じたりもしました。
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