一瞬の風になれ
ランニング関連メディア(雑誌・本・etc)陸上やってる奴が、なんであんなにタイムのことばっかり言うのか、少しだけ理解できたよ。名刺代わりとか看板とか思ってたけど、それだけじゃないね。出したタイムって、ほんとに"俺のもん"なんだよね。面白いや。
「一瞬の風になれ」より
随分久しぶりのブログ更新になってしまいました(^^;)。
前から気になっていた「一瞬の風になれ」。文庫版が出たこともあって今更ながら読了。
天才である兄へのコンプレックスから、サッカーから陸上に転向した主人公と、その親友である元天才スプリンター。この2人の100m、200m、そして4継(4×100mリレー)を中心とした陸上部3年間の青春物語です。
短距離の物語だし(自分は長距離ランナーなんで、、、)、単行本のときに買わなくても(3冊もあるし!)みたいな貧乏根性でいましたが、うーん、もっとはやく読んでいればよかった! 走ることをテーマにした小説の中では、駅伝物語である「風が強く吹いている」と間違いなく双璧をなす出来だと思います。
単にテーマとして陸上が選ばれていると言うだけでなく、長距離・短距離の違いはあるにせよ、元陸上部である私の目から見てももの凄くリアルな臨場感。それもそのはず、文庫版の後書き(?)によると作者の佐藤多佳子さんは、実際の陸上部を4年間もかけて取材したそうです(文庫本の後書きでは、取材対象だった元陸上部員達との座談会が掲載されていました)。
部活経験のある人ならばもちろん、そうでない人もきっと胸が熱くなるでしょう! 長距離・短距離の違いはあっても、走る人ならば共感間違いなしのシーンが盛りだくさんです。
自分は確実に進歩している。このまま、どんどんどんどん伸びていけるーーそんな希望が喜びと共に胸をいっぱいに浸した。どんなに嬉しいか人には分からないだろう
どんなスポーツでも自分の成長を感じられた瞬間というのは嬉しい。そして、走るという競技はタイムという形で明確に応えてくれる分、それを実感しやすいんですよね。「走って何が楽しいの」ということをよくきかれるけれども、冒頭に引用した台詞とあわせて、こうした自分の成長を実感しやすいっていうのがランニングの魅力のひとつなんでしょうね。
みんな自分の競技に、孤独に力を尽くすしかないのだ。そのチームメイトの届かなかった夢や無念も背負って、俺は走る。
チームメイト達が次々と敗退してしまう中で主人公がつぶやく台詞。スポーツものの青春物語では定石ともいえる設定だというかもしれないですけど、これもまたリアルなんですよね。努力が必ず結果に結びつくわけではない。
実はわたくしも、1500mで100分の数秒差という僅差で県大会出場を果たしたことがあり、一方で、最後の大会ではベストタイムを出しながらも100分の数秒差で出場を逃した、という経験があります。ボーダーライン上の争いって、本当にちょっとの差で明暗が分かれるんですよね。
スパートは、スピードとか体力とか思うだろうけど、ほとんど気力なんだ。(中略)。走りのリズムを全部変えて速くするんだ。死ぬくらいの気力がないとできない。
数少ない長距離レースのシーン。この台詞は「気力がないとスパートは難しいんだ」っていう意味で使われていたけども、私は逆の意味で捉えました。「体力が限界でも、スピードが尽きても、気力さえあればスパートはかけれるんだ」と。
などなど。ほかにも胸に来るシーンが盛りだくさんです。ぜひ一読ください!
ちなみにクライマックスである関東大会の舞台である、千葉県総合スポーツ陸上競技場。ここは、現役時代に何度も走った想い出の地。小説内に登場したときは思わずおーっと心の中で叫んでしまいました。
もっとも、うちらにとっては県大会はおろか、地区予選、記録会、駅伝県予選、はては母校のマラソン大会までここで行っていたので、あこがれの大舞台という感覚ではまったくないのですが(^^;)。
うーん、懐かしい!
一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫) |
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