「チーム」堂場瞬一
ランニング関連メディア(雑誌・本・etc)自分のチームを失い、それでも走る権利を手に入れた時、俺が出会った新しいチーム。(中略)。去年の箱根で負け、予選会で負け、またここで負けたらスリーアウトじゃないか。(「チーム」より)
昨日、神宮外苑を走った後、帰りに寄ったジュンク堂で偶然見つけた本。「風が強く吹いている」同様、箱根駅伝を舞台にした小説。予選会で敗れたチームのメンバーで構成される学連選抜チーム。その寄せ集めのメンバーが箱根本戦の優勝を目指すというストーリー。文章も読みやすく、一気に読了してしまいました。
チーム
堂場 瞬一
「風が強く吹いている」とは違い、これは充分現実的なリアルな物語です。実際、今年の箱根では学連選抜は4位という好成績を収めている。物語の中で何十年ぶりかの箱根出場を決めた青学は、つい先だって行われた現実の予選会でも見事出場を決めているし、そのあたりのリアルさからも、作者が十分な取材を行った上でこの作品を書いたことが伺われます。
1年前の箱根駅伝でブレーキを起こし、その雪辱の機会も予選敗退により失ってしまった主人公。自己の記録にのみこだわり、寄せ集めのチームになど関心をよせないエースランナー。特異な才能を持ちながらも、弱小校に入学したために4年間日の目を見ることもなく、自身が箱根を走ることなど考えていなかったランナー。怖いもの知らずの1年生ルーキーに、怪我で自身が走ることが叶わなくなったマネージャ。個性的なメンバーが集まり、ある意味王道的な物語と言ってしまえばその通りなのだが、スポーツものは、王道ものがやはり一番面白いんだろうなぁ。
正直なところ、小説の出来や面白さという意味では「風が強く吹いている」に軍配が上がるとも思ったけれども、先に書いたリアリティが各キャラクタの心情にも表現されており、充分一読の価値はあったと思います。
それにしても、駅伝というのは不思議なチームスポーツだ。ある登場人物がいう。「全員が区間賞を取れば勝てる。チームワークなんか不要だ」と。ある意味これは真実。バトンパスに技術がいるリレーと違って(だからリレーでは、持ちタイムでは圧倒的なアメリカもオリンピックや世界陸上で苦戦する)、襷リレーに要する時間なんて、長距離のタイムから比べたら誤差にもならない。走るのは一人ずつだし、そういう意味じゃ個人競技の足し算でしかない。
じゃぁ持ちタイムの差だけで勝負が実際に決まるのかと言うと、そうならないのが駅伝の不思議なところ。個人種目ではぱっとしないのにチームのためにといつも以上の力を発揮するランナーもいるし、逆にそのプレッシャーに負けてブレーキを起こす選手もいる。また、区間ごとに独特の特色があり(箱根は特にそれが顕著で、山登りの5区、山下りの6区など、平地の記録は当てにならない、とまで言われる)、メンバーの区間配置も重要な戦略の一つとなる。そう考えると立派にチーム競技であり、だから駅伝は面白いんだろうな、と改めて思う。
ちなみに、寄せ集めのメンバーで駅伝の優勝を目指すという話は、過去にも塀内夏子の「ROAD」という漫画があります。こちらは架空の駅伝大会を舞台にしているが、スポーツ漫画の名手として定評のある作者の描画は見事で、こちらもお勧め。ちなみに「ROAD」は、1〜3巻が「ROAD〜輝ける道〜」として、混成チームが駅伝大会の優勝を目指すという駅伝編、4,5巻が福岡マラソン編の「ROAD〜2つの太陽〜」となっている。ちょっと古いので店頭にはもう並んではいないと思うけど、興味のある人は古本屋やAmazonなどで探してみると良いかもしれない。
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今回は、堂場瞬一『チーム』を紹介します。本書は箱根駅伝の学連選抜チームで走る話である。学連選抜チームは箱根駅伝に出場…
2009 年 2 月 1 日 20:10 posted by itchy1976の日記