風が強く吹いている

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「俺は証明したかったんだ。弱小部でも、素人でも、地力と情熱があれば走ることはできる。誰かのいいなりにならなくても、二本の脚でどこまででも走っていける。俺は、箱根駅伝でそのことを証明したいと、ずっと願ってきた」

風が強く吹いている」より

直木賞作家三浦しをんの受賞第一作。かつてエリートランナーでありながらそれぞれに挫折を味わった主人公の二人が、陸上とはまるで縁のない八人を巻き込んで箱根駅伝へと挑戦する青春小説。

陸上小説というと「一瞬の風になれ」が有名だが(実はこちらは読んだことが無いが、確か4継の物語だったはず)、ジョギングやマラソンをやっているような人たちにはこちらの「風が強く吹いている」の方が共感がもてるんじゃかないだろうか?
ストーリーはある意味王道的だが、青春小説が好きな人にはお勧め。素直に感動できます。
特に、主人公の二人だけでなく、周りを固める八人のメンバー達のバックグラウンドが丹念に描かれる箱根駅伝本番のシーンは(実に全体の半分近くが費やされている)見事のひとことだ。

ただし、高校時代に陸上をやっていた人間からすると(今や面影はまるでないとはいえ。。。)、色々と突っ込みどころがあって、素直に共感できない点もちらほら。
例えば、初めて参加した記録会では、素人の8人中6人が、箱根駅伝予選会の参加標準記録(5000m17分)をあっさり突破してしまう。しかも、うち14分台1名、15分台3人。いくら何でもその設定は陸上を舐めすぎだろ(ちなみに高校時代の私のベストタイムは16分20秒。3年間、実質2年間だけど、必死で到達したタイムがこんなにあっさりとクリアされるとなぁ)。かといって、延々と成長の過程を描写していたらとても1冊にまとまらないのも分かるから物語の進行上仕方がないというのは理解できるのだが。

その点現在連載中のコミック版の方は、そのあたりがリアルに描かれていて、感情移入がしやすい。同じ初参加の記録会のシーン。主人公二人を別枠として、他のメンバーは一番早くても17分半と、まさに惨敗というように原作から変更されていた。
あるメンバーの台詞「高校3年間どんなにがんばっても17分切れなかった俺がか…!?」には、思わずうんうんとうなずきそうになりました。決して速いタイムでもないのは確かでしょうが、素人がそんなに簡単に到達できるようなレベルでもないでしょう。そのあたりをきちんと描いているコミック版のほうが、共感できて個人的には好きです。コミック版はまだ2巻(もうすぐ3巻が発売されるはず)。逆にここから、箱根駅伝で勝負できる14分台までの成長をどう描くか、というのが非常に興味深いところではあるが。。。

そういえば、遂に映画化もされるらしく、エキストラの募集がされていたらしい(情報源はこちら。http://stepblog.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_bce4.html)。映像にはすごい向いている作品だと思うので、こいつはすごい楽しみだ。エキストラには陸上経験者を募集しているくらいなのだから、「奈緒子」のときみたいに走る姿がリアルに撮影されていることを期待(マラソンや駅伝をテーマにした映像作品で、走るフォームが素人丸出しだと、さすがに白けるんだよね。。。)。あっ、でも逆に、走ることの素人の役者さんが役作りのために練習して走れるようになっていく姿を映像化すれば、むしろこの作品にとっては一番リアルなのかも。

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